TOMPKINSブログ

パネライ的進化論

TOMPKINS 水戸
こんにちは、TOMPKINS水戸の大橋です

今日からシルバーウィークで連休の方も多いでしょうか?
行楽に出かけるも良し、家でゆっくりくつろぐのも良しですが、いずれにしろのんびり羽をのばしてリラックスできるいい機会です


TOMPKINSで一番のんびりと時間を知らせてくれる時計はPANERAIで間違いないでしょう

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ご覧の通りほとんどの時計に分刻みの目盛りがなく、だいたいでしか時間が分かりません(笑)

このように見た目がファニーなので軽く見られがちなパネライの時計達ですが、元々はイタリア海軍の特殊部隊向けミッションウォッチというシリアスな歴史があります

そこで今回はパネライ進化の変遷を辿ってみたいと思います


パネライ社は1860年の創業ですが時計製造を始めるのはイタリア海軍に依頼を受けた1936年からになります。開発にあたって求められたのは海中での使用に耐えうる強度と防水性です。パネライの時計が作られ始めた1930~40年代はまだまだダイバーズウォッチなどはなかった時代でしたから、作ってみては現場の意見を吸い上げて改良するというトライ&エラーの連続でした。しかし完成形に辿り着くまでの過程で生まれたデザインはシンプルながら他の時計ブランドにはないオリジナリティを持つものとして現代まで受け継がれることになります。

 

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パネライウォッチはこのラジオミールから始まりました
パネライ社は元は時計販売店とは言え時計製造のノウハウはほとんどない状態でしたから、プロトタイプを作る際はある有名な時計メーカーに外注した防水性の高いケ ースを用いています
そのケースを再現しているのがこのラジオミールで、特徴は曲線で構成されたクッションケースに逆三角形の大きいねじ込みリューズ、ストラップは溶接したワイヤーに縫い合わせています。
これ以降の時計と比べると柔らかで繊細な印象を持つラジオミールはパネライの中ではドレッシーなモデルという位置付けになりますね


めでたく産声を上げたパネライウォッチでしたが少しすると海軍から改善要求が突きつけられます
溶接したワイヤーラグが貧弱だと言うのです
たしかに極限状態で47mmの大型のケースを支えるにはあまりに心許ない・・・
早速改良型として作られたのが溶接のワイヤーに替わってケースと一緒に削り出したブロック状のラグを採用したこのラジオミール1940です

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パネライ開発の時系列では二番目のデザインにあたりますが、現在の商品ラインアップの中では一番新しいシリーズであることもあってケースサイドには他のシリーズ以上の複雑な立体感が付けられています
これは自動車のサイドデザインと同様に時間と労力をかけることで見映えを良くする方法のひとつでしょう

さて、ラグの仕様変更で強度を増したパネライでしたがこれでもまだその進化は止みません

防水性の要であるねじ込みリューズは使用中に衝撃を受ける可能性があり、海軍側からすると残った数少ないウィークポイントのひとつでした。
1940年代初めにパネライ社はねじ込みリューズとは全く違ったアプローチで高い防水性と耐久性を実現します

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リューズを半円状のブロックでガードしつつロックレバーで気密性を高めるプロテクターが採用されたのです
ねじ込み式ではないリューズはレバーを上げればすぐに操作が可能、レバーを下げれば防水性能は当時でも200mという優れもの構造はとてもシンプルながらこれ以上ない解決策でした

プロテクターまで含めたケースデザインの造形と特徴的なフォントの数字を用いた文字盤、ここにもっともパネライらしいパネライであるルミノールが誕生しました
ラジオミールと比べるとケースの胴とラグはさらにボリュームを増していて、力強さが感じられます

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左奥からラジオミール、ラジオミール1940、ルミノールの揃い踏みです
そのフォルムの変化が分かりやすいように艶消しモデルを揃えてみました


これらパネライウォッチを駆使して一定の戦果を挙げたイタリア海軍ではありましたが、ご存知の通り枢軸国側であったイタリアは敗戦国となります

その後もごく少数の時計が作られはしましたが、元々軍事機密に属するものであったことや腕時計は薄く小さいものがしばらくの間好まれ続けたことなどにより表舞台にパネライの名が出ることはなく、現在のように一般市場向けに作られ始めるのは1990年代を待つことになるのです。
 


復活してからのパネライはその個性的なケースデザインと高いスペックを誇るムーブメントを車の両輪として現在まで快進撃を続けています

そう、パネライには語るべきムーブメントもあります
今日はケースデザインの歴史について書いたので次の機会はムーブメントのことについて書いてみようと思います

もちろん店頭でもお伝えしますのでパネライをもっと深く理解したい人は是非ご来店下さい